今回ご紹介する作品は『或る夜の出来事』です。
『スミス都へ行く』『素晴らしき哉、人生!』のフランク・キャプラ監督、『風と共に去りぬ』のクラーク・ゲーブル主演、サミュエル・ホプキンス・アダムズの短編小説「夜行バス」を映画化した作品。
アカデミー賞で主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)にノミネートされ、5部門とも受賞を果たした。
本記事では、『或る夜の出来事』のあらすじやキャラクターの解説、内容の感想・考察をまとめています。
作品情報
『或る夜の出来事』
あらすじ
大富豪の娘・エリーは父親に結婚を反対された事に怒り、家出。ニューヨーク行きのバスに乗り込んだ彼女は、偶然席が隣り合わせとなった新聞記者のピーターと旅を共にすることに。さまざまなトラブルに巻き込まれながら、やがてふたりは互いに心惹かれ始め…。
出典:U-NEXT
作品概要
タイトル | 或る夜の出来事 |
原題 | It Happened One Night |
監督 | フランク・キャプラ |
脚本 | ロバート・リスキン |
キャスト | クラーク・ゲーブル クローデット・コルベール |
制作国 | アメリカ |
制作年 | 1934年 |
上映時間 | 105分(1時間45分) |
『或る夜の出来事』を視聴するには
配信サービスで観る
配信サービス | 配信状況 | 配信形式 |
---|---|---|
U-NEXT | 定額見放題/31日間無料 | |
Prime Video | 定額見放題/30日間無料 |
この記事の情報は、2025年1月時点のものです。最新の配信状況はお使いいただくサービスにてご確認ください。
ネタバレ注意
以下、『或る夜の出来事』のネタバレが含まれます。
【感想・考察】元祖にして王道のラブストーリー
『或る夜の出来事』は、映画史に残る元祖にして王道のラブストーリーです。後の『ローマの休日』や『卒業』にも影響を与えた作品とも言われています。
スクリューボール・コメディと呼ばれる本作では、ストーリーも然ることながらキャラクターも魅力的に描かれています。
スクリューボール・コメディ(Screwball comedy)は1930年代初頭から1940年代にかけてハリウッドでさかんに作られたコメディ映画のサブジャンル。常識にとらわれない登場人物、テンポのよい洒落た会話、つぎつぎに事件が起きる波乱にとんだ物語などを主な特徴とする。「スクリューボール」は当時のクリケットや野球の用語で「スピンがかかりどこでオチるか予測がつかないボール」を指し、転じて突飛な行動をとる登場人物が出てくる映画をこう呼ぶようになった。
出典:Wikipedia
本作では、登場人物の他に陸・海・空などの空間や、バス・船・車・飛行艇などの乗り物でも心境を表しています。
主人公はピーターとエリーですが、二人と対比する存在としてウェストリーが登場し、それぞれの考え方の違いが特徴的に描かれています。ここではその3人に絞って考えていきます。
- 現実的で誠実なピーター
- 理想を求めて海に飛び込んだエリー
- 楽観的で遊び人のウェストリー
現実的で誠実なピーター
失業中の新聞記者ピーターと、父親の元を逃げ出して恋人の元へ向かうエリーが偶然出会い、お互いの心境が変化していくストーリー。ピーターはエリーと出会ってすぐに彼女に何が起こっているのかを察し、記事のネタにするため協力することになります。
記事のネタにするために協力しているということもエリー本人に包み隠すことなく正直に話しています。最初の印象はお互い好ましく思っていない様子。ラブストーリーでは王道の展開です。お互いに着飾ることなく、素を出しながら接していきます。
中盤、ピーターは「島で暮らしたい」という夢を語ります。(陸→海/現実→理想)
その夢を聞いたエリーは、その島で一緒に暮らそうと告白するのですが、陸から離れられない(理想を抱けない)ピーターは、この申し出を拒否してしまうのです。
理想を求めて海に飛び込んだエリー
親に内緒で婚約したことで洋上の船室に閉じ込められていたエリー。父親の目を逃れて海に飛び込みます。(理想の世界(海)へ)
序盤は口が悪く、金持ちをバカにし、野生のニンジンを生で食べるピーターにうんざりしながらも、お互いの利益のために行動を共にします。逃避行の中、何度も窮地に陥りながらも自分を助けてくれるピーターに徐々に惹かれていきます。
ピーターの理想を聞いたエリーは、自分からピーターに告白します。迷わず海に飛び込んで長距離バスに乗り込むような向こう見ずな性格なら、この心変わりも納得できます。
途中で誤解はありながらも、ラストはウェストリー(空)ではなく、ピーター(陸)を選び、飛行艇を通り過ぎ、車に乗り込みます。
楽観的で遊び人のウェストリー
ストーリー上は噛ませ犬として扱われるウェストリー。
エリーの婚約者であり、結婚式に飛行艇で訪れる、空から周囲を見下ろしているタイプの人として描かれている。
【感想・考察】アンドルーズの人生観
最初は悪役として現れるキャラクター。エリーとウェストリーの結婚に反対したことで、エリーが海に飛び込む原因を作った。
ストーリーはピーターとエリー双方の心の変化により展開していくが、アンドルーズの心変わりによりあのラストシーンへとつながっている。出会って、離れて、また巡り合うという定番の流れが続く中、アンドルーズの優しさと想いが見え始めるあたりから、行く末が気になって仕方がない。
終盤では、娘の結婚に反対していたのではなく、正しい相手を見極められていないことに反対していたのだと分かる。付き合っているウェストリーではなく、出会ったばかりで素性の分からないピーターに娘を託してしまうあたりは、娘の奔放さを見せられていた視聴者には意外だとは思われなかっただろう。娘の心を見透かして車まで用意している結婚式のシーンでは、思わずクスッと笑ってしまう。
【感想・考察】”或る夜”とはいつだったのか
作中では6回の夜が訪れるが、”或る夜”がいつの夜なのかは言及されていない。ここは観る人によって解釈が分かれるだろう。
- バスに乗ったピーターとエリーが出会う。
- 大雨により宿屋に泊まる。ジェリコの壁が築かれる。
- バスを離れ、川沿いで野宿する。
- エリーがジェリコの壁を越え、ピーターに告白する。
- エリーが家に戻り、ピーターに別れを告げる。
- ジェリコの壁が撤廃される。
以上、『或る夜の出来事』のレビューでした。